毎日、激しい風と雨が降った。
僕は全くテレビを見ないので、天気についてはノータッチだった。
こんな激しい風雨でも居間には誰も居なかった。
ただ、律儀に食事とコップはあった。
いきなり、絵奈さんが玄関から子供を連れて
「あー、嫌になっちゃう。雨だもん。びしょ濡れになっちゃった」
と言って入ってきた。
「身体を拭かないと風邪をひきますよ」と僕は自然と言葉が口から出た。
「うーん。風邪なんて大丈夫」と絵奈さんは笑いながら言った。
午後になると、裕子ちゃんが帰ってくる。
そして勉強を見る。
主に夏休みの宿題と、苦手分野の説明。
裕子ちゃんは、真面目に問題を解き、僕の説明を聞く。
自分からは、あまり質問はして来なかった。
ただ、良く勉強が出来る子だと思った。
プライベートは、会話が成り立たないので、ブラックボックスだった。
夜は宴会。
朝は風と雨。
それから、同じことが2日続いた。
毎日、絵奈さんは、何も喋らない男の子を連れてきた。
喋らない彼にも、何らかの理由があるのだろう。
喋りたくない人間に、無理やり喋らせる必要はない。
買いためた、パンが役にたった。
毎日1つ食べた。
僕は粘り強く待った。
全てのピースを完全にはめないといけない。
それが、僕の仕事だと言い聞かせて。
夜には、縁側に座ってあさがおを見ていた。
ツボミが開こうとしていた。