霊視で現実世界をカウンセリングして解決いたします。
霊能・スピリチュアルだけのアドバイスだけではなく、人が日々生きている現実世界との調和が必要だと思っています。
そのため、法律資格や現実世界の学びも生かした、総合的なカウンセリングとコンサルティングをしています。

あさがお7日目

僕は大島家を抜け出し、朝から山に登った。

正確には、朝を迎える前だ。
夜と早朝の微妙な駆け引きをぬって、大島家を抜け出した。
玄関からではなく、低い石で作られた塀を越えて。
集落の人間には、誰にも見られたくなかった。
夜は、僕の姿を隠し、早朝は、道を案内した。
山に手入れがされている道は見当たらなかった。
しかし、人が入っている気配はする。
その気配を追いかけ、獣道のような道を登った。
所々に、石で作られた線香立てがあった。
この集落の人間が作ったものだろう。
山の中腹辺りで、朝陽が昇っていた。
山頂は近い。
山頂に着く。
東側は、集落が手に取って見えた。
西側は、断崖絶壁だった。
見渡す限り、広い海と小さな島が見えた。
足元に小さなプラスチック製の白い髪止めが落ちていた。
まさに、海に陽が反射してきらめいていた。「ここで地終わり…だな」と思った。
日差しが強かった。
そして、僕は全てを知った。
僕は、山を降りた。
集落の人間が僕を激しく見つめていた。
見たければいくらでも見たらいい。
だからといって、何も変わらないんだ。
何も。
僕は無言で、玄関から大島家に入った。
大島家では、朝から騒ぎだった。
僕が理由ではない。
毎日の宴会がたたって、イタコのような老婆の霊能者が脱水症状を起こして、村を去ったのだった。
僕は思った。
生け贄はまだ足りない。
恒例の宴会は夜も主宰された。
僕は縁側に座って、伸びゆくあさがおを見ていた。
まだ、花は咲かない。
まだ、時期ではない。
絵奈さんが、後ろから声をかけてきた。
「今日、山に登ったんだって?」
僕は何も答えなかった。
絵奈さんは、一方的に話をした。
そして、最後に
「何かわかったの?」
と聞いた。
僕は、首を振りながら
「何も」
と嘘をついた。
まだ、時期ではない。
「ふーん」
絵奈さんは退屈そうに言った。
僕はあさがおを見ていた。