今日も晴天だった。
律儀に朝食とコップが置いてあった。
絵奈さんはやって来なかった。
午後、裕子ちゃんが帰ってきた。
勉強の準備を始めた。
青いノートに問題集と筆箱を机に置いた。
僕は
「僕は全てを知っている」
そう、一言述べた。
裕子ちゃんの顔色が変わった。
「お母さんに会いに行ってきていいですか?」
「うん」
僕は頷いた。
裕子ちゃんは、慌て駆け出していった。
僕は待った。
一時間位がたった。
もっと時間は去っていたのかも知れない。
僕には短い時間に感じた。
裕子ちゃんが、ゆっくり近づいてきて
「一緒に付いてきてもらえますか。」
と丁寧に話かけてきた。
僕は
「はい。」
短く答えた。
僕には、説明をする義務があるのだろう。
そのまま、帰らせてはくれないようだ。
裕子ちゃんに付いていく。
集落の人間は全く見えなかった。
森に連れていかれた。
森の真ん中には集会所があった。
バームクーヘンのように、樹々に隠してあり、集会所は中央にあった。
古く由緒正しいもののように感じた。
僕は歴史家でも文化人類学者でもないので、全く興味はなかった。
集会所には、集落の全員がいた。
あのぶっきらぼうな個人店のおばあさんですら。
こんなにも人がいたのかと驚いた。