霊視で現実世界をカウンセリングして解決いたします。
霊能・スピリチュアルだけのアドバイスだけではなく、人が日々生きている現実世界との調和が必要だと思っています。
そのため、法律資格や現実世界の学びも生かした、総合的なカウンセリングとコンサルティングをしています。

あさがお 13日目 完

僕は集落の人々の前に座らさせられた。

まるで、予備校の講義だなぁーと。
違うことは、僕の背中の後ろに祭壇があり、大きな鏡があることだった。
一人の老人男性が前に出て話かけてきた。
シワや髪の様子から、おそらく70才は越えているだろう。
「あのう、全てを知っているとはどういう意味かね?」
老人は優しく話かけてきた。
しかし、目の鋭さは隠せなかった。
僕は
「全てを知っているということです」
とだけ、はっきりと告げた。
優しい口調で。
しばらく、沈黙が続いた。
先ほどの老人が口を開いた。
「全てとは」
そう言ったあと、詰め寄ってきた。
僕は、
「絵奈さんが亡くなっていることです。」
集落の人々から、ため息や様々な感情の入り交じった声が出てきた。
僕は続けた。
「もっと、はっきりとお話しましょう。
絵奈さんは、あの山から海に身を投げた。お腹の中には子供がいた。男の子です。
そして、我々、霊能者は彼女の鎮魂のための生け贄だった。
あなた方は、そのため毎夜宴会をなさった。万が一、霊能者が来て、絵奈さんを鎮魂出来たらと、思いながら。
あなた方、全員がグルになって隠しながらね。
私は生け贄として、捧げられていたわけです。
そして絵奈さんの遺骨は、大島家の押入れに入っていますね。
私にははっきりと視えています。
骨壷に赤い布を被せて。」
僕が話終えると沈黙が漂った。
「か、神様」
と様々な所が声が出てきた。
すすり泣く声も。
「最初に島に学者が来たんじゃ。そいつが悪いんじゃ。島に滞在して…絵奈をかどわかして、島から出ようとしよって…」
老人は告げた。
僕は
「しかし、絵奈さんは皆さんの制止を振り切って島を出ようとした。しかも、お腹に赤ちゃんがいることも告げて。」
と諭すように話した。
「そうじゃ。それで学者を島から追い出したんじゃ。そして、絵奈を説得したんじゃ。島を出て行ったら、誰が母親の面倒を看るんじゃ。
お前は、かどわかされとるんじゃ」
と、老人は怒りをこめながら言った。
僕は冷静に話した。
「学者を島から追い出した後、絵奈さんは追いかけようとした。そして、集落全員で大島家を見張った。ところがある日、絵奈さんが居なくなった。集落総出で探したら、あの山の崖から身を投げていた。白い髪止めをして。あなた方はこのことを隠そうとした。しかし、毎日、死んだはずの絵奈さんが現れた。そこで恐れをなしたと。」
「あの男が悪いんじゃ。絵奈はええ娘じゃった。」
老人は激怒しながら大声をだした。
僕は、
「あなた方の学者の島から追いやったも、信じていません。それ以上は、私が話さなくてもわかるはずです。
はっきりと言わせて頂く、あなた方は間違っている。絵奈さんを追いやったのはあなた方だ。私には視えているんですよ。
絵奈さんのお母さんは、絵奈さんが島から出て行くことに賛成だった。そうですよね、お母さん。」
僕は、絵奈さんの母親に優しい話しかけた。
絵奈さんの母親は泣きながら、
「はい。絵奈が幸せになってくれるなら。ただ、それだけで。」
最後は、言葉になっていなかった。
一同は、
「あんた!」
と、驚きと怒りの声と罵りの声をあげた。
「どこに、子の幸せを願わない母親がいるんですか?当たり前だと、私は思います。
あなた方の幸せはあなた方が偽装しているものであって、理想とは異なる。」
僕は、厳しく述べた。
「しかし、神様」
と、老婆がすり寄ってきた。
「子供には無限の可能性がある。あなた方は、それを摘もうとだけしている。」
僕は微動だにせずに話した。
「実は昨夜、絵奈さんの鎮魂は私がすでにしております。」
僕は一同に優しく述べた。
集落の人間は、みんな安心したようで、喜んでいた。
絵奈さんの母親は泣きながら
「神様、私が全て悪いんです。」
と、大きな声をあげていた。
横で裕子ちゃんも泣いていた。
僕は、そっと絵奈さんの母親に近づいて、
「お母さんは悪くありません。絵奈さんはお母さんのことを心配なさってましたよ。」
僕は、喜んでいる集落の人間に無性に腹が立った。
そして「絵奈さんは、誰も恨んでいませんでしたよ。」
と、告げると、人々は更に安堵していた。
僕はその姿を見て、怒りと哀れみを感じた。
僕は、その時、若かった。
「ならば、私が皆さんの不幸を願いましょうか。ここで。」
と、大きな声ではっきりと言った。
全員が、聞き取れるように。